ベルトコンベア

ベルトコンベア方式はシンプルでありながら確実な救助方法です。 見た目は簡単ですが作ると意外に大変で、設計や動作トラブルの対応に多くの時間が掛かります。

実は奥が深い、ベルトコンベア設計について紹介します。

1.基本設計

1.1 基本動作

ベルトコンベア全体を前方に移動させながらベルトを引込方向に巻き取り、 ダミヤンの背中に滑り込ませます。

ベルトの引込速度はベルトコンベアの移動速度に合わせるのが理想です。 このとき、ベルト上面と地面との相対速度は0になります。

速度を合わせるのが難しい場合は、ベルトの引込速度を速めにします。 引込速度よりベルトコンベアの移動速度が速いとダミヤンを奥に押し込んでしまい、 状況が悪くなる可能性があるからです。

1.2 ロボットの基本的な形

ベルトコンベアを搭載するロボットの形は下記の理由から概ねトンネル型かコの字型になります。

・ 前方に展開するベルトコンベアの妨げにならない
・ ベルトコンベアを地面に近い場所に設置したい

トンネル型のロボットは回路、カメラ及びハンド等を搭載する場所を確保しやすく、 ロボット全体のサイズもコンパクトにまとまるので設計しやすいです。

一方、コの字型はロボットの高さを抑えることができます。

1.3 ベルトの幅

救助を想定するダミヤンの方向によってベルトの幅を決定します。

ロボットに対して頭/足を向けているダミヤンの救助のみを想定するなら、 ベルト幅180mm程度がバランス良くていいと思います。

1.4 板の幅

板の幅はベルトの幅より少し大きくします。 ベルトがない余白の部分が現れますが、機能や操作の面で考えると余白は小さい方がよいです。

第一の理由は、ベルトコンベアをコンパクトにして、ロボットの操作を楽にするためです。 ダミヤンを救助できて、その上、余白がガレキに接触しない条件を揃えるのは大変です。 ガレキを整理できればいいですが、家ガレキや最終競技のガレキなど、ガレキを動かせないパターンもあります。

第二に、ベルトにダミヤンの頭を乗せないと救助時に首へ負担が掛かるか、救助できない場合があります。 体を引込めば頭はオマケでついてくる、と考えていると失敗します。 余白を広くとるのなら、その分ベルトを広くする方が良いです。

1.5 ベルトコンベアの展開

ベルトコンベアを地面に擦りながら走行できないため、 通常時は地面から離しておき、ベルトコンベアを使うときに地面に近づけます。

ベルトコンベアを前方に展開するときはロボットの駆動輪を使ってロボット全体を前方に移動させてもよいですが、 ロボットとダミヤンが意図せず接触するリスクが高いです。安全重視でロボット本体は動かさず、 ベルトコンベアのみ前方へスライドさせる方法が良いと思います。

展開方法の例を4つ挙げておきます。

ベルトコンベアのみ傾ける

 

上下用と展開用の2つのスライドを用いる

動作例 » かばさん(なだよりあいをこめて)Youtube

ベルトコンベアをスライドと共に傾ける

動作例 » 三河(からくり忍者)Youtube

柔軟性のある素材で展開する

動作例 » GK-03 Kreis(がんばろうKOBE)Youtube

1.6 ドライブローラの位置

ベルトを駆動するドライブローラを板の上に設置するか、 下に設置するかで機能が変わります。


板の上にローラを設置

ベルトコンベア下面が平坦なので、下側からローラレールで支えることができます。 ドライブローラが地面と接触することを考えなくていいので設計しやすいですが、 救助時にダミヤンを巻き込まないような注意や工夫が必要です。
ベルトの張力の伝わり方から、ダミヤンを引込みやすく、 やや押出しにくいという特徴があります。


板の下にローラを設置

ベルトコンベア上面が平坦なので、上に乗せたものを手前側まで運ぶことができます。 救助用のベルトコンベアから搬送用のベルトコンベアにダミヤンを移し変えるというアイデアも可能です。
ベルトコンベア展開時にドライブローラが地面に接触しないように注意する必要があります。

2. 詳細設計

2.1 ベルト

ベルトの素材はゴム、布、滑り止めシート、布に綿を詰めて布団状にした帯など幅広いです。 ここでは、基本的なゴムのベルトについて紹介します。


ゴムの選択

扱いやすさの面からゴムの厚さは0.5mmを使用します。 厚さ1.0mmのゴムはベルトコンベア先端で曲げ半径が大きくなり過ぎて扱い難いです。

厚さ0.5mmのゴムとしては天然ゴム 又はクロロプレンゴムが入手しやすいです。 天然ゴムの方が機械性質が良いらしいですが、安価で入手できるのは幅100mmまでです。 一方、クロロプレンゴムは幅500mmまで入手しやすい価格帯に収まっています。

» 天然ゴムロール
» クロロプレンゴム


端の接合

ゴムの端と端を接合し、ベルト状にします。
接合部分を斜めにすることで、ベルトの厚さ、硬さ及び摩擦力の変化がゆるやかになり ベルトの駆動がスムーズになります。

接合にはエースクロス011等の接着力の強いテープを適度な幅に切り取り、 ゴムの両面に貼り付けると十分な強度が得られます。

ベルトの幅を増やす目的で縦に接合するときは、ゴムの片側にテープを貼るだけで十分です。

» エースクロス011


ベルトの色

ベルトは暗い色にするとよいです。 ベルトの色が明るいとカメラ画像に色調補正が掛かり、 ダミヤンの目の色が分かり難くなる可能性があります。

カメラとLEDを予め準備し、操作画面の色調を事前に確認するのが理想です。

2.2 板

素材

ある程度の強度があり、ベルトとの摩擦が少ないことが板の条件です。 フッ素樹脂粘着テープを貼ればゴム相手でも摩擦が少なくなり、板の選択肢が増えます。

アルミ板やアクリル板等、自身が扱いやすい素材を使うとよいです。 ポリカーボネート板等の比較的柔らかい素材でも補強すれば使うことができます。

» フッ素樹脂粘着テープ


ローラ型

板の代わりにローラを使う方法があります。
先端のローラは丸パイプに寸切ボルトを通します。

ローラ型は板よりゴムとの摩擦が小さく、ベルト駆動に必要な力が少なくて済むようです。

2.3 板の先端

ベルトが地面に接触すると大きな抵抗が発生してベルトが動かなくなるため、 接触を回避するように工夫します。

ベルトコンベアの高さを操作できる場合、操作でベルトと地面の接触は回避できますが、 物理的に接触しないような工夫がしてあれば操縦者の負担がかなり軽減されます。


スペーサの設置

板の両隅にスペーサを取付け、ベルトと地面が物理的に接触しないようにします。


先端の補強

板の剛性が低い場合、スペーサを設置してもダミヤンが乗ることで板が歪み、ベルトが地面に接触します。

そのような場合は板の先端にアルミバー等を貼り付けて補強します。


先端のクサビ

板の先端は薄くなるのが理想ですが、板の強度等を考えるうちに、ある程度厚くなっていきます。

先端部分が厚いとダミヤンの救助が難しくなるので、塩ビ板(厚さ0.5mm)を折り曲げて先端にクサビを作ります。 板とクサビの接触面が広いため、接着には両面テープを使うと良いです。

2.4 ドライブローラ

ドライブローラはモータのトルクをベルトに伝達する大切な部分です。 ここの完成度次第でベルトコンベアの使い勝手がかなり変わります。


動力の伝達

ドライブローラにベルトを巻きつけるだけでは動力の伝達が不安定になります。 ベルトの動作を安定させるために、サブローラか板でベルトをドライブローラに押さえつけます。

サブローラでベルトを押さえつけた場合は動力の伝達がかなり安定します。

板でベルトを押さえつけた場合は負荷を掛けるとローラが空転する場合がありますが、 ダミヤンを頭⁄足から救助するだけなら問題はありません。

サブローラでベルトを押さえつける
板でベルトを押さえつける


設計例

大きめのアルミ丸パイプにスポンジゴムを接着剤で貼りドライブローラとします。 貼り付けるスポンジゴムは最初から筒状になっているものが使いやすいです。 ここでは、SGB-330を輪切りにして一つずつ貼り付けています。

モータの駆動力伝達のために小原歯車のDS成形平歯車をローラの両端に接着剤で固定します。 2つの歯車のうち1つは軸受としか機能しませんが、歯車が安価なので製作容易化を優先します。 DS成形平歯車の穴径公差は -0.05 〜 -0.30mm なので、フランジブッシュを穴に設置し、 歯車が軸に対してフリーになるようにします。

軸はΦ外径6mmアルミ丸パイプを寸切りボルトで固定することで、構造としての強度を持たせます。

サブローラは廣杉計器の丸型中空スペーサで、材料はジュラコン樹脂を使用します。 ジュラコンは適度に強度と潤滑性があり、安価で扱いやすいです。

部品名 部品番号 寸法等 単価 メーカー
アルミ丸パイプ(大) AM321 外径Φ32mm、厚さ1.5mm 799 円
アルミ丸パイプ(小) 外径Φ6mm、厚さ1mm、B2アルマイト 269 円 安田
スポンジゴム SGB-330 内径Φ約29mm、外径Φ約38mm 319 円
DS成形平歯車 DS1-40 モジュール1、歯数40 315 円 小原歯車工業
フランジブッシュ 80F-0605 内径Φ6mm、外径Φ8mm 29 円 オイレス工業
スペーサ C-620 内径Φ6mm、外径Φ10mm、ジュラコン 19 円 廣杉計器
寸切りボルト M4

2.5 ベルトの横滑り対策

ベルトを駆動し続けているとベルト全体が少しずつ横にズレていきます。 この横滑りはトラブルの元となるため無くなるのが理想ですが、 マシンを調整してもなかなか完全に無くなりません。

そこで、ベルトの両側にストッパーを設置します。 ベルトは柔らかいのでストッパーを乗り越えないようにカエシを付けてあげます。 ストッパーは塩ビ板 0.5mm厚 を折り曲げて作るか、チャンネル材を使用するとよいと思います。

小さなストッパーでも設置することによって競技中の横滑りによるトラブル発生を防ぐことができます。 競技後はベルトのズレが無理やり抑えられている状態ですので、競技の合間にベルト位置を調整してあげましょう。

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