車輪走行

ロボットが移動しないとロボコンは始まりません。 移動機構はロボットの基礎となる部分ですので、確実に動くようしっかりと作りたいところです。

車輪タイプは一般的に平面上で移動が速い、エネルギー効率が良くバッテリーが長持ちする、 そして整備が容易という利点があります。

一方で、車輪にガレキが絡まるとロボットの身動きが取れなくなる可能性があるため、 走行前にガレキを除去して通路を整地する等の配慮が必要です。

1.車輪方向を固定

始めに紹介するのは車輪方向を固定し、車輪回転数の差のみで前後移動、旋回を切り替える方法です。
構造がシンプル、ロボット操作も直感的で分かりやすいため、多くの競技ロボットに採用されています。

要注意点は旋回時に車輪を横方向に滑らせる点。
横方向の摩擦が旋回を阻害し、駆動輪が空転してしまうことがあります。

駆動輪が空転する条件では、モータ出力がいくらあっても旋回はできません。


1.1 二輪駆動

基本的な考え方

2輪をモータで駆動させ、残りの2輪を補助輪として自由に回転させます。 補助輪が1つの計3輪タイプも考えられますが安定性に欠けるため、 特に理由のない場合は計4輪にする方が良いでしょう。

4輪を同じタイヤにした場合、ロボットが旋回できる条件は 「a > 2b」 です。 この条件はかなり厳しいため、駆動輪を摩擦のあるゴムタイヤしにて、補助輪を摩擦の少ない樹脂タイヤにする等の工夫が必要です。

» 旋回条件の計算


駆動輪は前か、後ろか

ダミヤンへのアプローチのみを考えれば駆動輪は前方に置いた方が有利ですが、 全体的に考えると駆動輪は後方に置いた方が良いと思います。

それぞれの利点と欠点を以下に挙げます。

前方 駆動輪 の利点
・ダミヤンへのアプローチが楽

前方 駆動輪 の欠点
・前輪がガレキに乗り上げると身動きできない
・駆動用モータが救助機構の邪魔になる
・ハンドや救助機構をロボット前方に展開するときにマシンが前のめりに転倒しやすい

後方 駆動輪 の利点
・前方がスッキリして救助機構を配置しやすい

後方 駆動輪 の欠点
・ダミヤンへのアプローチが難しい
・ダミヤン収容後に重心位置が前方に移動して旋回性能が低下する


バンププレート対策

レスコンの競技フィールドにはバンププレートが配置されています。 1.1項で紹介している2輪駆動ではバンププレート上で直進はできますが、旋回は基本的にできません。 交差点上にバンププレートが配置されている場合は右折・左折ができずに困ることになります。

対策としてはバンププレートの直前と直後の2段階で旋回することにより、 バンププレートの真上で旋回せずに進路を変更することができます。 しかし、ロボットのサイズが大きくなるとこの方法は難しくなります (ロボットのサイズ:幅400mm×長さ600mmは可能でしたが、これ以上のサイズになると難しいと思います)。

レスコンではルールの隙を突く行為は推奨されませんが、これくらいならいいかな、と個人的には思っています。

1.2 四輪駆動型

基本的な考え方

4輪全てをモータで駆動させます。

2輪駆動と比較して走行が安定し、バンププレート上で旋回できたり、ガレキを乗り越えやすくなります。 また、旋回中心がロボット中央にあるため、旋回中にロボットを振り回すことがなく ガレキを不意に崩してしまう等のトラブルが発生しにくい利点もあります。

4輪を同じタイヤにした場合、ロボットが旋回できる条件は 「a > b」 です。 タイヤ配置をやや横長にすることで旋回がスムーズになります。

» 旋回条件の計算


モータ配置

各タイヤにモータを配置する方法が簡単です。 他にチェーンやベルト等の動力伝達機構を用い2つのモータで4つのタイヤを駆動する方法もあります。

各タイヤにモータを配置した場合の問題点は、ロボットの下段がモータに占領されてしまう点。 そうなると救助時にダミヤンをモータの上の段まで持ち上げる必要があり、 救助機構の複雑化とダミヤンの負担増につながります。

対策として歯車を用いてモータの配置を工夫し、ロボット中央にダミヤン収容スペースを確保する方法があります。

4輪駆動はこのモータ配置が原因でロボットのサイズがやや大きくなる傾向があります。 レスコンのフィールドは通路は狭いので大型ロボットの操縦は難しいです。 ロボットが大きくなりすぎないように気を付けましょう。

2. 車輪方向を操作

各車輪の方向を操作するとロボットのその場回転、進路変更や全方向移動等の多彩な動作が可能になります。
フィールド移動時間の短縮、ダミヤンへのアプローチ時間の短縮やガレキ除去に大きな力を発揮します。

課題は駆動機構に要するスペースが大きい点。
駆動機構のスペースを確保しつつ、ロボットの大きさをどのように抑えるかが考えどころです。
ロボットのサイズ削減のためにダミヤンをモータの上の段まで持ち上げることも十分選択肢に入ってきます。

車輪の方向をサーボで操作する場合、ちょっとした設定の違いによって操作感が変化しますので
ロボットを早め作製し、操作しやすいようなサーボの設定を試行錯誤してから競技に臨みたいところです。

まぁ、ロボットの完成はいつも大会ギリギリになるんですけどね。

車輪方向の操作トルクを低減するため、タイヤは硬めで幅が狭いものを採用するとよいでしょう。

2.1 ステアリング型

前輪の方向を操作するとロボットの進行方向が制御できます。 コーナリングがスムーズなため移動時間を短縮でき、 ガレキを押しながら進行方向を調整して通路の端に寄せるといった操作もしやすくなります。

この機構の恩恵は直進にもあり、ロボットの進行方向のズレをノンストップで修正できる点が強いです。

また、前輪をハ字型にすることで無理なくロボットを旋回させることができます。

2.2 横移動型

全ての車輪を 「左右対称」 に操作することで 前後移動、旋回、左右移動の3つのモードに切り替えてロボットを操作することができます。

左右移動モードが特に有用で、 探索エリアで取り込んだガレキを排出するときに少し横に移動したり、ダミヤン救助時のロボット位置合わせに重宝します。

車輪方向の操作範囲が90°であり、後述する全方向移動と比較して設計者、操縦者に掛かる負担はかなり軽いです。

2.3 全方向移動型

全ての車輪を 「同方向」 に操作することで、ロボットを全方向に移動させることができます。

実際に縦横無尽に動けるのはある程度広いスペースのある探索エリアに限られますが、 探索エリアのダミヤン付近で全方向移動のような自由度の高い操作を要求することは操縦者の負担になります。 ダミヤンに近づくほど、ロボットには慎重な操作、精密な操作が要求されるものです。

全方向移動、と言うと何となく万能感があるように感じますが、実は使いどころが難しいのです。

車輪方向の操作範囲が180°であり、真横移動時にモータがロボットからはみ出します。 4輪駆動と同じく歯車等を使用してモータの配置を工夫する必要がありますが、 最終的にモータがある程度はみ出してしまうのは許容することになると思います。

車輪方向操作のバックラッシュの関係で進行方向の歪み(直進しようとしても徐々に曲がっていく)が発生しやすく、 これを全方向移動で修正するとロボット自体は直進できますが同時に旋回していきます。 面白い挙動ですが特に役に立つものではなくトラブルのもとになりますので、 進行方向が歪んだ場合はその都度ロボットの方向を修正してあげる方が良いと思います。

3. 多輪走行

多数の車輪を搭載するとガレキ走破性が高くなります。 各車輪は地形に合わせて上下させます。

2015年時点でレスコンの路上ガレキは床に固定されていない軽量の木材です。 さらに複数の木材が紐で連結された状態になっています。 結果としてレスコンの路上ガレキは押し出しやすく、崩れにくい、というものになっています。

そのような理由から、通常はガレキを乗り越えようとしてもガレキが前に滑って思うようにいかなかったり、 乗り越え時にロボットが転倒してしまうことになります。 ガレキを乗り越えるためには予想以上の工夫と努力が必要です。

そのような状況でも多輪型ロボットは安定してガレキを乗り越える高い走破性を発揮しています。
詳細な構造や動きについては下記ページがヒントになると思います。

» 兵庫県立大学ロボット紹介ページ(第10回出場)
» MS-R(第10回 Youtube)

多輪ロボットの中でも兵庫県立大学の八起(2010年、2号機)のガレキ走破性が突出していた記憶があります。
しかし残念ながらガレキを乗り越えている時の動画が見つかりませんでした。

4. 特殊車輪

車輪自体に特殊な機能を持たせることにより、比較的簡単な仕組みでロボットに全方向移動等の動作をさせることができます。 詳細な動作や仕組みについては下記サイトが参考になります。

» オムニホイールの紹介 (土佐電子)
» メカナムホイールの紹介 (土佐電子)

オムニホイール及びメカナムホイールの問題点は不整地での動作が不安定なこと。 そして車輪が高価で1セット4個で1万円以上は必要になります。

特にオムニホイールの不整地での動作はかなり問題で、小さいガレキに接触しただけでロボットが停止します。 路上ガレキを整理してバンププレートを避ければその機能を発揮することができます。 しかし、レスコンでは稀にスタート地点のすぐそばにバンププレートが設置されている場合があり、不整地を避けて通れない場合があります。

一方、メカナムホイールは正面から接触すればある程度の不整地を突破できます。 バンププレートに進入し、プレート上で旋回することも可能です。

5. ワンポイント・アドバイス

走行システムの選び方

走行システムには沢山の種類があります。 アイデア実現に不可欠な走行システム、或いは興味のある走行システムがあれば迷わずそれを選べばよいでしょう。 そうではない場合はどれを選択するのか悩むかもしれません。 そのような時に参考になりそうなことをまとめてみます。

走行システムは手を加えれば加えるほど理論上の操作性能は向上します。 反面、製作に時間を掛けすぎると操作練習の時間が少なくなる、 ロボットを作りこむ時間が不足して動作が不安定になる等の問題が出てきます。 という訳で、「限られた時間で適切な走行システムを製作できるのか、できないのか」 という判断が非常に重要になります。

初めてロボットを製作する、又は救助システムがメインで走行システムを作り込む余裕がない、という場合はシンプルな走行システムをお勧めします。 本頁始めに説明した2輪駆動は設計・製作が容易で、製作費も抑えることができます。

ロボット操縦者にとって走行システムに期待することは安定して動作することです。 安定して動作さえすれば少々クセが強くても練習で大抵のことは乗り越えることができます。 練習を積んだ操縦者の技能は侮れません。


車輪の製作

車輪の製作で楽なのは市販の部品を購入することです。 タミヤからラジコンカー用のタイヤゴム、ホイール、ハブシャフト(モータ固定用金具)を入手することができます。

» タミヤ ギヤードモーターハブシャフト


ハブシャフトは六角形の大きさが2種類あり、対応するホイールのみ固定可能なので間違えないように。 また、ハブシャフトはホイール固定用ナットを強く締めすぎるとネジ部が破損します。 ナットを固定してタイヤを手で回して締める程度で大丈夫です。 ホイール固定用ナットは緩み止めナットになっていますが過信しないようにします。 本番前に必ず緩んでないか確認しましょう。

旋盤が使える環境なら車輪は自作することができます。 厚さが10mmを超えると材料となる樹脂等も高価になりますが、 身近にある安価な素材としてはプラスチックまな板があり、強度、加工性 共に申し分ないです。 円板の側面に溝を切り、Oリングをはめ込めば立派な車輪になります(グリップ力はタミヤのタイヤより劣りますが)。 車輪をモータに固定する金具はセットカラーを購入してもいいし、 材料となる金属があればセットカラーと同等の機能があるものを自作してもよいと思います。

» セットカラー


モータと車輪の接続

モータの出力軸にはトルク荷重、アキシアル荷重及びモーメント荷重の3つの荷重が掛かります。
モータが負担するのはトルク荷重のみになるのが理想です。

アキシアル荷重とモーメント荷重には許容値があり、これを超えるとモータの効率が落ちます。 レスコン規模のロボットなら許容値をあまり気にしなくても大丈夫ですが、 車輪とモータが支えもなく離れているとモーメント荷重が大きくなるため、その点にだけ要注意です。


補助輪としてのキャスター

市販のキャスターはロボットの補助輪としても便利な機能を備えており思わず使いたくなります。 しかし、お勧めはできません。

キャスターの土台回転軸とタイヤの接地点がズレている関係で、 ロボットに細かい動きをさせるとロボットの方向が意図せず少し変動します。 この意図しない方向の変動がロボットの操縦感覚に悪影響を及ぼします。

キャスターを設置するスペースがあれば通常の車輪も設置可能ですので、 とりあえずキャスターを使用してロボットを製作し、ダメだったら通常の車輪に置き換えるという方針もいいと思います。

© 2015 Karakuri Ninja Robot Project